Araripia とされる被子植物葉化石を含むサンタナ層の石灰質頁岩

サンタナ層の葉化石を入手

2018年11月30日 化石商より購入。白亜紀前期の被子植物化石の産地としても重要なサンタナ層(ブラジル)のもの。購入時の情報は以下の通り。

種名:Araripia florifera 時代:中生代白亜紀前期 産地:Santana Formation, Ceara, Brazil 被子植物の葉の化石です。ブラジル産、中生代白亜紀のものです。 ブラジル、セアラー州には白亜紀の有名な地層が2つ分布しています。1つが良質な昆虫化石などが産出するクラト層、そしてもう1つが、恐竜や翼竜、魚類などの化石が産出するするサンタナ層です。 この標本は、そのサンタナ層から産出した被子植物の葉の化石です。仕入れ元によると、アラリピアとのことです。アラリピアはクスノキ類に近いと考えられている被子植物です。 この標本では化石の凸側と凹側の両方が残ったネガポジセット。葉や葉脈の様子がよくわかります。 葉の長さ約6.8cm。

被子植物の葉化石の他にも針葉樹の葉片にみえる小さな植物片が見えている。右端に樹枝状に広がっているのはデンドライトで植物化石ではない。脈系は鳥足状脈。
被子植物の葉化石の他にも針葉樹の葉片にみえる小さな植物片が見えている。右端に樹枝状に広がっているのはデンドライトで植物化石ではない。脈系は鳥足状脈。
化石は茶色に着色していて、葉脈や葉柄はとくに色が濃い。葉柄の部分を顕微鏡で拡大してみた。
化石は茶色に着色していて、葉脈や葉柄はとくに色が濃い。葉柄の部分を顕微鏡で拡大してみた。

分類学的所属の検討:Araripia との比較

シルト質で白色の母岩に対して、葉の部分は茶色いものが染みこんだようになっている。散在する黒点は葉面上にも広がっていた。褐鉄鉱・パイライトなどに置換されているようで、目に見えて炭質物としては保存されていない。
シルト質で白色の母岩に対して、葉の部分は茶色いものが染みこんだようになっている。散在する黒点は葉面上にも広がっていた。褐鉄鉱・パイライトなどに置換されているようで、目に見えて炭質物としては保存されていない。

Araripia の Generic diagnosis と葉の特徴が異なる。葉の外形は直接比較しにくい保存状態であるが 3 lobed の様子ではなく、脈系も異なるため Araripia とするのは問題がある。現段階では、所属不明の被子植物葉化石として捉える。

サンタナ層産の他の被子植物化石や、同時代の植物化石の記録の文献調査も進めておく。

本化石の特徴

  • 葉の外形:末端は明らかに欠けているが、それ以外で残っている部分の縁辺部がおおまかに葉縁の形状だとすると、Araripia で記載されたような 3 lobed の特徴は明確ではない。細かく凸凹しているように見える。
  • 脈系:鳥足状脈、二次脈は一次脈から30度程度で分岐、三次脈は不規則だが、基部からわかれた主要な二次脈の外側ではさらに分岐が進む。
  • サイズ:葉は欠けているが、全体が保存されていれば 5-6 cm 程になる。Mohr and Eklund (2003) で記載された標本は明らかに若い枝先の葉であり、大きく育った葉が本化石ほどの大きさになることはあり得る。

Araripia florifera

Tentative reconstruction of Araripia florifera (Fig. 3, Mohr and Eklund 2003)
Tentative reconstruction of Araripia florifera (Fig. 3, Mohr and Eklund 2003)

Mohr and Eklund (2003) により、Crato 層産の花の付いた枝先の化石をもとに Araripia florifera が記載された。

Generic diagnosis によると、葉は不規則に3つに浅裂し、羽状脈で二次脈は葉縁に達し、高次脈は極めて不規則。Specific diagnosis によると、葉のサイズは 2-3 cm で3つに浅裂、一部は2つに浅裂。化石の記載として、葉は対生で全縁、二次脈は一次脈から45°までの角度で分岐し、三次脈は極めて不規則とある。

産出層準と年代:Santana Group (Aptian-Albian)

本化石は業者から購入したものであり、詳細な産出地点や層準は分からない。業者の情報によると、本ブラジル、セアラー州のサンタナ層(Santana Formation)産とされるが、厳密な産出地点や層準は不明である。

Cabin et al. (2018) によると、アラリペ堆積盆の前期白亜紀の地層の層序区分については長らく議論があり、Barbalha, Crato, Ipubi, Romualdo の各層をサンタナ層の部層としたり(Assine, 1994; 2007)、Romualdo 層をサンタナ層とするなど、幾つかの層序単元に別の名称が提案されたりしてきた(Martill, 2007)。とはいえ、これまでのところ Neumann and Cebrera (1999) で提案された区分が最も妥当とされ(Kellner et al,. 2013; Assine et al., 2014)、最新の区分では Crato, Ipubi, Romualdo Formation をまとめたサンタナ層群(Santana Group) をアラリペ層群(Araripe Group) から独立させている。 –– Citations: see Fabin et al. 2018 and references therein)

このような経緯があるため、サンタナ層産とされ、さらに詳細な産出層準の情報のない本化石は、サンタナ層群 (Santana Group) の Crato Formation, Ipubi Formation, ならびに Romualdo Formation を含む、年代にして Aptian-Albian の地層に由来すると捉えるのが妥当だと考える。

※ "ブラジル、セアラー州には白亜紀の有名な地層が2つ分布しています。1つが良質な昆虫化石などが産出するクラト層、そしてもう1つが、恐竜や翼竜、魚類などの化石が産出するするサンタナ層です。" という情報の書き口からは、サンタナ層とクラト層を区別しているように思えるが...

”サンタナ層” 産の魚類化石は化石市場によく流通している。魚類化石はCrato 層の Plattenkalk や、Romualdo 層の有機炭素の多い頁岩中のコンクリーションからよく見つかる。両層をサンタナ層の部層とする層序区分は、魚類化石関連の論文でもしばしば用いられてきたこともあり、市場に流通している"サンタナ層"の化石は、Crato 層か Romualdo 層のいずれかの可能性が高く(それ以外の層準でもまとまって産出することがあるのかは知らない)、やはり"サンタナ層群産"と捉えてよいものだろう。ちなみに、本化石の母岩は平行葉理の発達した層状石灰質頁岩であり、Crato 層に典型的に見られる岩相であることを付記しておく。

Geography and geology of the Araripe Basin, northeastern Brazil (Figure 1; Fabin et al., 2018)
Geography and geology of the Araripe Basin, northeastern Brazil (Figure 1; Fabin et al., 2018)
(Fig. 14; Fabin et al., 2018)
(Fig. 14; Fabin et al., 2018)

References

Mohr, Barbara A. R., and Helena Eklund. “Araripia Florifera, a Magnoliid Angiosperm from the Lower Cretaceous Crato Formation (Brazil).” Review of Palaeobotany and Palynology 126, no. 3 (October 1, 2003): 279–92. https://doi.org/10.1016/S0034-6667(03)00092-7.

Fabin, Carlos E., Osvaldo J. Correia Filho, Márcio L. Alencar, José A. Barbosa, Tiago S. De Miranda, Virgínio H. Neumann, Igor F. Gomes, and Felipe R. De Santana. “Stratigraphic Relations of the Ipubi Formation: Siliciclastic-Evaporitic Succession of the Araripe Basin.” Anais Da Academia Brasileira de Ciências 90, no. 2 suppl 1 (June 25, 2018): 2049–71. https://doi.org/10.1590/0001-3765201820170526.

メモ:

Ipubi Formation の琥珀にはフェルギノールなどが含まれている(有機物の熟成度としては有機地球化学分析の対象となり得る)