サイエンスカフェ「分子の化石、バイオマーカー」@苫小牧市美術博物館

苫小牧市美術博物館で開催されたサイエンスカフェにて、植物や藻類の分子化石を用いた古環境復元について講演しました。
苫小牧市美術博物館のサイエンスカフェは2013年から始まって、3回目。北海道を拠点に活躍する若手研究者が、最新の研究をわかりやすく紹介するというコンセプトで企画されています。

分子の化石、バイオマーカー

当日は、
  • 分子化石とは何か
  • 植物の分子化石と、白亜紀の植物進化や陸上の環境変動の研究への利用
  • 藻類の分子化石が過去の水温を記録している(アルケノン古水温計)
  • Q&Aコーナー
という流れでお話ししました。私の不慣れなところもありアルケノンの話題は時間の都合でかなり割愛してしまったのが心残りですが、
  1. 生き物の体を構成する微小な脂質分子にも、生物のグループごとに特徴がある
  1. その一部は生物の死後も分解を免れて地層の中に残っている(= 分子化石)
という、分子化石のコンセプトが少しでも実感を持って持ち帰ってもらえたならば幸いです。

利きテルペン

植物の分子化石の代表格として紹介したテルペノイドですが、分子骨格をずらっと見せて、こんな成分ですと解説するだけではニュアンスが伝わらない場合も多いもの。まずは、目に見えない分子の種類の違いを「体感」してもらうべく、参加者の皆さんには利き酒ならぬ「利きテルペン」に挑戦してもらいました。
用意したのは、オレンジの精油(主成分=リモネン)やミントから精製された L-メントールの結晶といった、異なる植物から集められた香りの成分。この香りはまさに、揮発性のテルペノイドによるものです。ラベルを隠して香りを嗅いでもらい、どんな植物の成分かを当ててみるチャレンジです。
結構、皆さんそれぞれの香りに対応する植物をイメージできたようでした。
香りから植物の種類を言い当てられたということは、まさに、植物の種類ごとに独特の化学成分(テルペノイド)があり、その組成を今回は嗅覚というセンサーを用いて判別することで、植物の種類を特定できたということです。できるということに他なりません。実際に分子化石として地層中から見つかる分子はこれらの香りの分子よりも分子量の大きなものが中心なのですが、植物の種類ごとに含むテルペノイドの種類が違うということが実感してもらえたかな?
# ヒノキの精油の香りを嗅いで、ミョウガかな?ショウガかな?とコメントをしてくれた高校の科学部の方がいて、とても良いセンスだと感心しました。ヒノキとショウガやミョウガの仲間には共通の香り成分 α-ピネン が含まれています。